12/16−12/29

・中原浩大のトークを聞きに武蔵野美術大学に行ってきた。このブログに内容は詳しい。2011年の美術手帖のインタビューを再読。平野甲賀展は充実していた。装幀の展示はどこでもやりがちだが、演劇関係の雑誌や新聞、ポスターの資料は価値があったのではないか。初期のスケッチも初めて目にした。学生とのワークショップの成果も、よい展示だった。

徳田虎雄という人物のことが気になっている。

・『愛、アムール』と『テッド』を観たが、どうってことのない内容だった。前者はアクの強いこれまでのハネケ作品と比べると味気なく、エマニュエル・リバの熱演だけが過剰に浮かび上がってくる。上半期に反響を呼んだ後者は、もたつくかなと思いきやなかなか笑えた。『地図と領土』と同じで、現地の状況(主にゴシップ)に知悉していればもっと楽しめたんだろうなとは思える。毎度思うのは、日本でこれをやるとどうなるのか、ということだ。お笑いの素人性は許容するけど「素人」は許容できない土壌からして成功しないのかもしれない。

・『鑑定士と顔のない依頼人』と『スプリング・ブレイカーズ』を観た。『スプリング・ブレイカーズ』はカイエ・デュ・シネマで2位に選ばれた作品だ。『セデック・バレ』はほっぽり出してある。なんせ長いんだもの。

・『神は死んだ』を読み始める。佐々木敦の書評

・クリスマスということで『素晴らしき哉、人生!』を鑑賞。監督はフランク・キャプラ。宇宙の天使のささやきの描き方は画期的。畳み掛けるようなラスト、幸福感に包まれる。

・『わたしはロランス』(アップリンク)鑑賞。女装趣味のロランスが外見を女にしてからの十年の歳月が、フレッドというひとりの女性との関係性の中で描かれる。スタンダードサイズのスクリーンに、鮮やかな映像と音楽が美しい。完璧というよりも若さゆえの猛進で、溢れるパッションに魅了される感じ。それが、劇中のロランスの「これがわたしだ」という信念とマッチングしていて、効果が高まった。衣裳も監督が担当したそうなのだが、あっぱれという出来。小難しく美しいだけのアート映画に終わらせず、扱いづらい題材ながら鑑賞者を拒絶せず、観せていく手腕はすごかった。上映時間が3時間弱もあるが、十年の見せ方に緩急があることで、飽きることはない。たまの決めシーンにでてくるロゴと、それに合わせた音楽も素敵。ストーリーは、マイノリティの中でも分かりやすく「女性になって男性を愛したい」というのはではなく、女性の恰好はするが恋愛対象はそのまま女性。3期に分けるとすると、①ではロランスとフレッドの恋愛。ロランスは教師として勤めていたがある日女装で登校する。②二人が別れてから再び出会うまでの日々。それぞれ新しい恋人ができており、フレッドは結婚までしていた。③ロランスの新著をフレッドが受け取ったことがきっかけで、旅行に出ることになった。それからの日々。①は普通のジェットコースタームービーとして楽しく、②はやるせない日々を描いていくが、③で少し弛んだかな、とは思った。結局、二人はまた別れることになる。フレッドはロランスと別れた時に子供を妊娠していたのだが、堕胎していたのだ。ロランスは知らなかった。フレッドはすぐにまたロランスとよりを戻すつもりだったのだ。「あなたのせいで人生を台無しにしたくない」という言葉と共にフレッドはいなくなる。ラストシーンは、二人の出会いの場面だ。鑑賞中は圧倒されて満足が持続したが、終わってみてあれはなんだったのだろう、言いたかったことはなんだったのだろう、と考えずにはいられなかった。良さでもあり、分かりにくさでもあるだろう。

・海王堂の社長のドキュメンタリーを鑑賞。面白かった。誠実な仕事っぷりで涙がでた。

・銀杏ボーイズ「東京終曲」のミュージックビデオを見た。

・『スミス都へ行く』鑑賞。傑作。議長がいいね。最初はスミスに優しくて緊張和らげてあげようとニヤニヤしてるんだけど、あまりのスミスの頑張りっぷりに顔が変わるんだよね。そうして最後にはまた「よくやった」と言わんばかりの笑み。アメリカ国民の気持ちになって観ていたから泣けて泣けて仕方がなかった。歴史の短い国で、合衆国憲法だけが心の支えで、スミスはそれを盾にして戦った。アメリカという国が勝ったのだと、強く印象に残るだろうなあ。こういう戦いの場面で、最後には耐え切れなくなり真実を吐露した敵の議員は偉かったな。ちゃんと立場ごとに正義を貫く。清々しい気持ちになった。スミスがボーイスカウト出身で子供たちに愛されているのと、中央政界のオヤジばかりのギスギスした雰囲気との対比が効いていた。キャプラでは一番好き。

・観光地の計画の展示の初日に行った。トークショーなんかもあり、展示室2では別のグループの展示がなされていた。