堤清二死去
訃報 : 堤清二さん死去…セゾン元代表、作家「辻井喬」− 毎日jp(毎日新聞)
流通大手セゾングループ元代表で、「辻井喬(つじいたかし)」の筆名で作家・詩人としても活躍した堤清二(つつみ・せいじ)さんが25日午前2時5分、肝不全のため東京都内の病院で死去した。86歳。(...)東大経済学部在学中に学生運動に参加し共産党に入党するが、後に除名。康次郎氏の秘書を経て54年に西武百貨店に入社。66年、社長に就任。百貨店以外に、スーパーの西友や「無印良品」ブランドの良品計画、パルコを展開し、バブル期には「インター・コンチネンタル・ホテルズ」を買収。売上高4兆円を超える一大流通グループを築いた。
しかし、中核の西武百貨店が経営不振に陥り、91年にセゾングループ代表を辞任。92年には西武百貨店の代表権も返上した。2000年、グループ企業「西洋環境開発」が5538億円の負債を抱えて特別清算したため、経営の一線から身を引いた。
一方、61年、屈折した青春の体験を暗喩によって表現した詩集「異邦人」で室生犀星詩人賞を受賞。84年、小説「いつもと同じ春」で平林たい子文学賞。グループ代表退任後、旺盛に創作に取り組み、詩集「群青、わが黙示」で高見順賞、「鷲がいて」で読売文学賞、小説「虹の岬」で谷崎潤一郎賞、「父の肖像」で野間文芸賞を受けた。07年から芸術院会員。12年、文化功労者。
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ハンナ・アーレント
座談会の出席者たちは、いわゆる「在特会」の「朝鮮人は死ね」といったヘイトスピーチの主張に、かつてハンナ・アーレントがユダヤ人虐殺の中心人物であったアイヒマンについて語った「凡庸な悪」を見いだす。そして、深みのない「凡庸な悪」であるからこそ、底無しに広がってゆく可能性があると指摘している。彼らは特殊なのではない。わたしたち社会の中に、彼らの考えに同調する素地があるのだ、と。
だが、その「凡庸な悪」に染まり、世界を滅ぼそうとしているのは、「在特会」とそれを支持している人たちだけなのだろうか。
アーレントは、アイヒマン裁判を傍聴し、彼の罪は「考えない」ことにあると結論づけた。彼は虐殺を知りながら、それが自分の仕事であるからと、それ以上のことを考えようとはしなかった。そこでは、「考えない」ことこそが罪なのである。
わたしたちは、原子力発電の意味について、あるいは、高齢化や人口減少について考えていただろうか。そこになにか問題があることに薄々気づきながら、日々の暮らしに目を奪われ、それがどんな未来に繋(つな)がるのかを「考えない」でいたのではないだろうか。だとするなら、わたしたちもまた「凡庸な悪」の担い手のひとりなのかもしれないのだ。
(論壇時評)暗い未来 「考えないこと」こそ罪 作家・高橋源一郎:朝日新聞デジタル
『ハンナ・アーレント』を見る前に 岡野八代 | WAN:Women's Action Network
先程の論壇時評で『なんとなく、クリスタル』についても、興味深いからひいておく。
33年前、モデルの女子大生を主人公にして、田中康夫が書いたデビュー小説『なんとなく、クリスタル』は、本文とは別に442個の注をつけて、世間を騒然とさせた。だが、その評価は、流行のファッションや音楽にばかり目を向けた、軽薄な若者向けの作品、というものが大半だったと思う。わたしは、小説に潜む鋭い批評性に深い感銘を受け、そのことを書いた。もしかしたら、自分を「炯眼」と思いこんでいたのかもしれない。だが、実のところ、なにもわかってはいなかったのだ。
後年、作者は、自分がいちばん読んでもらいたかったところに誰も気づいてはくれなかったと述懐している。
その部分とは、小説の最後、本文が終わった後にある「出生力動向に関する特別委員会報告」と「五十五年版厚生白書」だ。そこでは、「将来人口の漸減化」と「高齢化した社会」の到来が不気味に予言されている。はかなくも美しい、都会の物語は、はるか未来の「暗闇」を前にして、より一層、輝きを増していたように、いまは思う。
では、なぜ、当時は誰もそのことを指摘しなかったのか。
そこで予言されていた「暗い未来」は、とりあえずは、自分たちとは関係のないものに思えたからだろう。「楽しい現在」に酔いしれていたのは、登場人物ではなく、それを批判した「世間」の方だったのかもしれない。