思想書では、11月に行われた高崎経済大学におけるシンポジウム「現代思想の源泉としてのキルケゴール ──生誕200周年記念ワークショップ」は来年1月末に「現代思想」誌で特集が組まれることになっている。千葉雅也の博士論文をもとにした『動きすぎてはいけない』が発売され、クァンタン・メイヤスー、グレアム・ハーマンらを中心とした「ポスト・ポスト構造主義」に注目が集まっている。

アートの分野では「関西ニューウェーブ」の作家・中原浩大による久しぶりの大規模な個展「中原浩大 自己模倣」岡山県立美術館)が注目を集めたアンドレアス・グルスキーフランシス・アリスなど注目の海外作家の個展が相次いだ。工藤哲巳、桂ゆき、福田美蘭ハイレッド・センターの再評価や、「ルネサンスの三巨匠」であるミケランジェロダ・ヴィンチラファエロの展示が行われ、「貴婦人と一角獣展」、フランシス・ベーコンアントニオ・ロペス、カイユボット、ターナー、ジョセフ・クーデルカなどの展示もあった。
狩野山楽・山雪」(京都国立博物館)、「當麻寺 −極楽浄土へのあこがれ−」(奈良国立博物館)、洛中洛外図屏風が展示された「京都展」東京国立博物館)、円山応挙白隠など日本への注目も高かった。フランシス・ベーコン展、「夏目漱石の美術世界展」東京藝術大学美術館)や、「日本の民家一九五五」展(汐留ミュージアム)、植田正治没後百年の展示も(東京都写真美術館東京ステーションギャラリー)。識者のベストはこちら

磯崎新が海市以来の展覧会をICCで開催中だ。橋下徹市長のもと、芸術への助成が問われもした。論集『写真と文学ー何がイメージの価値を決めるのか』が編まれ、黒瀬陽平『情報社会の情念―クリエイティブの条件を問う』が発売された。四谷アートステディウムの閉校騒動では、書名を集めるブログや、「芸術教育」自体を問うサイトが組織された。建築史家の五十嵐太郎が芸術監督を務めた「あいちトリエンナーレ」は絶賛を浴びたが、地元紙・中京新聞とのあいだでは、座談会に対する意見表明がなされた。堤清二が亡くなり、セゾン現代美術館では昨年没した宇佐美圭司の個展(「ART TRACE PRESS 2」に詳しい特集)が開催。H. U. オブリストによるインタビューをまとめた『キュレーション』アール・ブリュットの論集が発刊。

ファッションデザイナーの山縣良和(writtenafterwards)は「絶命展」(パルコミュージアム)を企画し、国立新美術館ショー(新美編)を行った。共著『ファッションは魔法』(アイデアインク)を坂部三樹郎(mikio sakabe)と出版した。

建築では、槇文彦が『漂うモダニズム』を発刊。『形の合成に関するノート/都市はツリーではない』が再刊。国立近現代建築資料館が動き出した。

演劇では、『演劇最強論』が編まれ、チェルフィッチュの「地面と床」が好評を呼んだ。平田オリザ『新しい広場をつくる――市民芸術概論綱要』を著した。鴻英良が提起し、日本映画大学の政治活動への誓約書問題があった。フェスティバルトーキョーのディレクター交代にあたっては、疑問の声を投げかける人々があらわれ、取材がなされた宮本亜門神奈川芸術劇場芸術監督をやめることに。

映画では、スタジオジブリが『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』を公開し、二作を取り仕切った宮粼駿と高畑勲の最後の監督作と言われている。制作風景は、ドワンゴ川上量生プロデュース、砂田麻美監督のドキュメンタリーになった。『風立ちぬ』は様々な論者が感想を表明し、岡田斗司夫ニコ生で行った解説を本にまでしたタランティーノが黒人奴隷による復讐劇を描いた『ジャンゴ 繋がれざる者』、ギレルモ・デル・トロパシフィック・リム』、アルフォンソ・キュアロンゼロ・グラビティ』が注目された。邦画では園子温による『地獄でなぜ悪い』、『凶悪』、是枝裕和そして父になる』、沖田修一横道世之介』が話題を集めた。テレビドラマでは、森山未來尾野真千子が共演した『夫婦善哉』、『ラジオ』、宮藤官九郎の脚本による『あまちゃん』がヒットした。

音楽書はこちらでまとめている方がいらっしゃった。