ソチ五輪、HHhH、エレン・ペイジ

クリープハイプというバンドは峯田和伸がファンであると公言したことで知った。ダイノジ大谷ノブ彦のラジオで彼らの曲を褒めていたのだ。音楽誌「音楽と人」で峯田とクリープハイプのボーカル尾崎の対談を読んだ。長くて全部は立ち読みできなかったけどなにより写真がよくって(梅佳代によるもの)ボーカルの目に湛えている素直な感じがいいと思った。曲自体はしっかり聴いたことはない。これからちゃんとききたい。そんな彼らが声明文を発表した。読んですぐ涙ぐんでしまった。こんなことはあるのかもしれない。現実に起こっていることだし。その状況に対してこのようなかたちでこのような文章で声明を発表しナタリーが記事にしたことをどうやって受け止めるか考えてみている。(↓表紙が面白いので貼ってみた)

音楽と人 2014年 03月号 [雑誌]

音楽と人 2014年 03月号 [雑誌]

ソチ五輪。開会式は15分程観た。オリンピックの開会式は見ていて楽しい。その国が威信をかけて一夜のショーに注力する。どのように演出家を選び、どのように国民を扱ってショーを成功させるのか、たかだか1時間ほどのそれを見ているだけで透けてくるように思われる。そして自らの国が開催国であったならばどうであろうかと夢想を試みることも可能だ。ソチの五輪では五輪マークの輪っかがひとつだけ開かないというミス(ロシアの反同性愛政策に抗議をするアメリカへの当て付けではないかという推測もある)はあったものの、総じて華々しい、豪華絢爛なものであった。そうして始まった五輪も、まったくみることなく日程は過ぎてきたが、昨日深夜に行われた男子フィギュアスケートショートプログラムは坐して正視した。はにゅーくんは素晴らしく、国際大会で初めてという100点代の点数が掲示板に点った瞬間には歓喜をあげてしまった。順位は2位ということだったが、パトリック・チャンという選手は、自分には、はにゅうーくん以上に演技としては素晴らしく見えた。途中にミスがあったので2位は妥当だと思うのだが、ミスがなかった場合、チャン選手は1位だったのだろうか。それともはにゅーくんはそれを超えていたのか。チャン選手のもっともよいポイントは滑らかであるところだ。一方、はにゅーくんはゴツゴツしていて、一連の動作が野性的で統一性を意識していない(ようにみえる)。そんなはにゅーくんが現在世界一であるのならば、フィギュアスケートでは滑らかさは重視されていないということになるのか。ちかごろダンスに関する著作を読み漁っていたので気になった。ダンスは20世紀初頭の正当な(なめらかな)ダンスのあとに、マリー・ウィグマンらの荒々しいものが登場したわけだ。フィギュアの知識を早急に手に入れなければ。

ヤン・ヨンヒついてのドキュメンタリー「映画で国境を越える日〜映像作家・ヤン ヨンヒという生き方〜」を観た。すごく良かった。在日コリアンドキュメンタリー映画監督が劇映画を撮り世界に評価された。称賛は嬉しいものの、同時に、家族に危害が及ぶかもしれないことを監督は懸念している。現に監督は北朝鮮に入国が許されなくなった。同様に家族にも実損が及べば、映画の評価に嬉しがってもいられなくなるというのだ。羨ましかったのは、世界の映画祭で「かぞくのくに」を自分の国の事情に引きつけて観客が理解をしたということだ。だから遠い極東での出来事から離れて、身近な切実な問題として鑑賞者に響いてくる。先程の心配事をきいたニューヨークの大学の恩師は彼女を抱きしめた。世界に映画を観て真剣に考え意見を発する人がいてくれているという安心感。恩師はすべてを受け止め抱きしめてくれる、そんな居場所が存在するという安心感。それらは人間にとって最もかけがえの無いものだろう。

マツコ・デラックス矢野顕子萩本欽一。「笑っていいとも」のテレフォンショッキングのゲストが豪華だ。『ふたりの笑タイム』を読んで以来、ちゃんとこの番組の最後を迎えたいと思っている。

・『トルストイの大地 〜辻井喬のロシア・ユートピア巡礼〜 』をみる。

ローラン・ビネの『HHhH』

HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)

HHhH (プラハ、1942年) (海外文学セレクション)

エーリッヒ・フロム『愛するということ』
孤独から逃れる手段として、①祝祭的興奮状態、②集団への同調、③創造的行為が挙げられている。

愛するということ 新訳版

愛するということ 新訳版

都築響一『東京右半分』
とにかく面白い。手話だけのキャバクラ、褌ゲイバー、梵字バー、ロック・メタル画廊など、街中で見落としてきた気になるスポットを著者が丁寧に追った記録。インタビューが丁寧で、説明文にも寛容さと健全な興味が宿っていて、本当に愛して好きだからこそ取り上げているんだというあからさまではない矜持が仄見えてくる。だからこそ読者は信頼できるし、取材先も気持ちよく許可を出すんだろう。そういう関係性からこそ、このような本も生まれうるんだな(読了後、春日太一さんのラジオに都築さんが出演しておられるのを少しだけ聴けた。ゴールデンタイムにラジオでえんえんホストのコールをかけ、いかに文化的に面白いか(後年まで記録として残さなければいけないか)を説くさまがいかにもかっこよかった)

東京右半分

東京右半分

岡田暁生『音楽の聴き方』『西洋音楽史

音楽の聴き方―聴く型と趣味を語る言葉 (中公新書)

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西洋音楽史―「クラシック」の黄昏 (中公新書)

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塩澤幸登『雑誌の王様 -評伝・清水達夫と平凡出版とマガジンハウス』

・メディア芸術祭には行けず。シンポジウムを前にして村上隆は怪気炎を上げていた。実際にきく予定だったのだけど。


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①『サンセット大通り』(ビリー・ワイルダー★★★★★☆
死体のナレーションに導かれる、男がひでえ映画。脚本家志望で(実際に脚本家なんだろうけど)鳴かず飛ばずのいい年した男が、自動車の故障で偶然入った屋敷の大御所女優ノーマン・デズモンド(ただし現在仕事なし)に気に入られヒモ生活を謳歌する話。ヒモで生活させてもらっているのにサイレント映画時代の大御所女優に対してペーペーの脚本家が言いたい放題。外に言ったらすぐ悪口を言う。だったらお前自活してやれることやれよと思うわけだが。そんな愛人生活にはデズモンドの執事と脚本家の友人の女が重要人物として絡んでくる。執事は実は元映画監督で女優が大御所になるのをグリフィスと共に(!)支えたのだった。しかも一番目の夫であって、いまも寄り添い女優のプライドを満たすため方便も厭わない。一方、脚本家志望の女は主人公の友人の婚約者になるわけなんだけどいつのまにか熱は冷めていて、主人公のことが好きになってしまう。そうしてラストに雪崩れ込むわけなんだが、まずもって脚本家志望の女を屋敷に招いているのがおかしい。ようやるなと。そうして可愛い嘘をついて嫌いにならせる。そうならば最初から優しくするなよと。この男の優柔不断さが女達を苦しめているのに。嘘をつき追い払ったのをみた屋敷の主人は当然自分への愛を貫徹させてくれたのだと喜び勇んだが、男はでていくという。女優は愛を込めて慎重に三発肉体に打ち込む。ここで冒頭のプールの死体と話が繋がってくる。圧巻のラストでは元映画監督の執事が女を外に連れ出すために擬似的な映画撮影のスタイルをとる。ここでの執事の演技がすごい。この映画は大御所女優と執事の愛憎であったとでも言うようにお互いのことを知悉した二人は、戯画化された状況も全力でやり遂げプライドを満たしながら逮捕されることができた。みすぼらしさはない。ライトアップされ、美しく、主人は捕まっていくわけだ。40ー50年代にかけて暗い犯罪映画の潮流としてあったフィルムノワール(ハイコントラスト)。ドイツ表現主義のホラー映画撮影者(カリガリ博士など)の仕事によるものだ。サンセット大通りとはハリウッドやビバリーヒルズにほど近い通り。ハリウッドには映画会社はひとつしかなく、それがパラマウント。20世紀フォックスはセンチュリーシティ。ワーナーはバーバンクにあるそうだ。バスター・キートンも出演している。もちろん無言で。セシル・B・デミルもいい役だ。『十戒』も見なきゃ。

②『グッドフェローズ』(マーティン・スコセッシ★★★★★★
けったいなDVDで鑑賞してしまったことにより、先に後編の1時間半を観た。言っている意味がわからないだろう。昔のDVDの仕様はDVDの表裏それぞれに記録されており、ひっくり返さなければ全編を視聴できない。始まりが唐突であったことで直ぐ様気づくべきであった。だが、これはおかしなことに、後編だけ観ても十分面白かったのだ!!むしろ省いただけあって洗練されており気持ちがいい短さだった。全編を鑑賞する前に感想を記しておく。デ・ニーロ含め大勢のメンバーで大犯罪を犯し大金を得るが山分けするのは勿体無いし足がつくと困るのであらかたのメンバーを殺してしまう。そうして残ったのは3人。主人公とデ・ニーロともう一人。主人公は散々言われたのに薬に手を出し、逮捕される。釈放されたのちデ・ニーロに殺人を唆されこのままでは死ぬと悟り(殺せということはお前も死ぬということ)デニーロともう一人を警察に売ってしまう。出廷し、なだらかな人生をこの後は生きていくのだ。というわけで前半を観たが印象は然程変わらない。主人公の出自がより明確になるだけだ。主人公はヤクザな世界とはまったく縁遠かった。だが偶然憧れの気持ちが生まれ、子供のうちからマフィアの世界に飛び込んだ。マフィアが裏を張っていたピザ屋で働いたのがその端緒なわけだが、そこのボスがラストに警察に売ったひとり。デニーロには「仲間は売るな」「決して口は割るな」を肝に銘じるように言われていた。だからこそラストはどんでん返しとして有効で痛快なのだ。

③『アメリカン・ビューティー』(サム・メンデス★★★★☆☆
死体がナレーションをするつながりで。サム・メンデスって「住宅」とかそこに住んでいる「家族関係」に余程こだわりがあるのだろうな。花びらが胸から飛び出したりベッドの上から降ってくるのはさながらダサいグザヴィエ・ドランみたいだ笑。『レボリューショナリー・ロード』よりはこちらの方が好きだ。とにかく狂おしい人間をそれがさも同然のようにえがく映画には心惹かれる。結局、主人公は娘の同級生と、妻は他の男と、娘ジェーンは隣の家の息子と、それぞれつながりを持てた。近所のゲイのカップルもそんな一例だ。唯一つながりを誰とも築けなかった隣の家の男は、悲惨な結末として、主人公を射殺してしまう。息子に理解を示そうとせず(マリファナの尿検査を求め、自室に入った理由をちゃんと聞かず、主人公にフェラチオをしたと勝手に妄想してしまった)、近所のゲイカップルを罵倒し、マッチョに孤独に生きてきていた。だからこそ雨に濡れる男は物悲しく辛そうだった。一足飛びに悲惨な結末を招いてしまった。どこかに結節点があり、それを求めてさえいれば食い止めようがあったかもしれないのに。主人公が会社をいとも簡単にやめ(毎回上司とのやりあいは笑える)ファストフード店に勤めたり、妻は不倫相手に突かれて悶える。そういう細部も過剰で楽しい。けれど、本作は、プレイブックやアフターアワーズのような切実なマイノリティの構築とは少しちがってみえる。どちらかというとドランにちかい。それがなんなのかは、自分の課題だ。

④『戦場でワルツを』(アリ・フォルマン★★★★☆☆
元兵士のイスラエル人監督がレバノン内戦の失くした記憶を探しに聞き取りにまわる。インタビューの声は本当のドキュメンタリーで映像はアニメーションだ。

⑤『お熱いのがお好き』(ビリー・ワイルダー★★★★★★
すごく面白かった。まずマリリン・モンローがエロい。たまらない。可愛すぎる。付き合いたい。こんなに夢中になってしまうとは思ってもいなかった。ストーリーはこうだ。マフィアの殺しを目撃してしまった楽器吹きの二人は女装して女性楽団に紛れ込む。そうして新天地で束の間の安息をとれていたが、マフィアがやってきてしまう。追手から生き延びるためにヨットで逃亡をはかるのだが、と。ここにモンローが絡んでくる。電車の車内で女性だと思い込み主人公の男のベッドに入ってきてしまったりする。こちらまでドキドキする展開だ。また、主人公の男が女装を解いて女とイチャイチャする。ここもドキドキする。コメディとしての面白さは折り紙つきなのだが、なんたってモンローが可愛い。そこしか見ていない。ドタバタが楽しい。でもやっぱり逃亡してヨットに乗ってただの貧乏の笛吹きについてきちゃう、可愛いモンロー。自分の保守的な恋愛観に嫌気がさすが、魅力的な映画に仕上がっている。オチもいい。ちょい役に見えたおじいちゃん、寛容すぎだろ!!

⑥『アパートの鍵貸します』(ビリー・ワイルダー★★★★★★+★
すごく良かった。とても。『アパートの鍵貸します』の題が名作で、アパートの鍵を貸していた男が貸さなくなるまでの話。平社員の男は断れない男で、上司に自分のマンションの部屋をちょくちょく間借りさせていた。当時のアメリカにはラブホテルの機能を持つモーテルはなく、浮気をする場所が限られていたから上司には重宝された。主人公の男にとって家が借りられそのあいだ外で時間を潰さなければならないのは辛かったが、昇進を匂わされ断れなかったのだ。辛いことばかりではなくいいこともあった。あるとき自分が好きになったエレベーターガールが人事権を握っている部長と不倫をしていると知る。だが主人公は気弱で事を荒立てることは嫌いだから、我関せずを決め込むし、へたに介入しようとはしない。ある時、部長が実は妻と離婚していなかったと知った女が睡眠薬を大量摂取して昏睡状態に陥ってしまう。隣室の医師に助けられ一命を取り留めるが、部長は懲りておらず妻と別れると都合よくこの女と再婚しようとしていた。これまでは断れなかった主人公は最後の最後、アパートの鍵を貸すのを断り会社をやめ、アパートも解約する。エレベーターガールは大晦日、このことを聞かされ走り男と女は結ばれる。上品で、しかし愛が丁寧に描かれている名品。ワイルダーで一番好き。台詞と伏線の貼り方が美しい。とくに、トイレの鍵を一旦は返却させ、部長に気づかせることで感情の機微を強調しているところや、脇役の感情の変遷を丁寧に見せるところ(秘書がパーティーで漏らしてしまう、妻にバラす、隣室の医師が主人公の立ち位置に気が付き最後は親しみを抱いていることなど)がいい。主人公の男の感情は吐露されないから、総じて気持ちが掴みにくい。だからこそこちらは想像するし、善意とはなにかを考えざるをえなくなる。馬鹿な男と馬鹿な女の映画であるとの誹りを免れさせたいと強く思い続けさせる強さがある。

⑦『その男、凶暴につき』(北野武★★★★★★
傑作。警察官・北野武は凶暴な男でむちゃくちゃだ。どのような精神構造をしているかわからない。理性が働かず、刺したり撃ったりしてしまう。周りの人間は彼の判断と彼の暴力を抑えるべく常に気を使う。おかしい話だが、彼は警察官なのに。相手役を務める白竜も対になるほどの狂気を持った人間で、北野武の妹を部下にまわさせる。ドラッグでもって頭をおかしくさせる。さすがにひいた。暴力描写は凄まじく、北野武の役柄が頭がいっちゃっていることも相まって、どこで発砲するか、どこで体を切り刻むか分からず、こちらは常に目を背ける準備に追われることになる。警部を辞めたところから尚一層狂いは回り出し、北野武の側も人をばんばか殺していく。白竜の上司をはじめ。白竜は部下に撃たれても死なず、撃ちまくり殺す。北野武とやりあうが、北野武は撃たれてもへっちゃらだ。というか、弾が当たらない。白竜は死に、そんな北野武もあっさり死ぬ。こいつらは狂っていたで終わればいいのだが歯車はなくなればそこに合致する歯車が供給されるだけであり、北野武の部下のへっぽこがいつのまにかヤクザ稼業に身を染め、白竜のポジションについている。狂気は一代限りではない。どこまでも続く・・・・。

⑧『かぞくのくに』(ヤン・ヨンヒ