ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡展

11月9日[土]−12月23日[月・祝]
戦後美術の坩堝であった読売アンデパンダン展が崩壊した1963年、三人の若き前衛芸術家(高松次郎赤瀬川原平中西夏之)によって、ハイレッド・センターは結成されました。安保闘争後、高度経済成長の道を邁進する1960年代の日本において、三人の頭文字の英訳(Hi-Red Center)を並べただけの公共団体を思わせる名称を掲げて、平穏な「日常」のなかに「芸術」を持ち込むことで、退屈な「日常」を「撹拌」しようと試みました。山手線の車内や有楽町駅などで行われた「山手線事件」を先駆として、HRCの武器(紐、梱包、洗濯バサミ)を公開した「第5次ミキサー計画」からはじまって、核時代の世界の現実を背景として帝国ホテルで行われた「シェルター計画」や東京オリンピックが開催される銀座の並木通りで行われた「首都圏清掃整理促進運動」などの「直接行動」は、現代社会における「芸術」的な陰謀として実行されました。そして、千円札裁判の「法的における大博覧会」に至るまで、HRCは「行為」としての「芸術」を展開した代表的なグループとして、アメリカやヨーロッパの美術界から熱い注目を集めています。記念すべき結成50周年に開催する本展では、HRCが発行した印刷物やイベントの記録写真をはじめとして、主要メンバーの同時期の作品も含めて、ハイレッド・センターの「直接行動」の軌跡を紹介します。

名古屋市美術館で開催中のハイレッド・センター展。彼らの大規模な回顧展は初めてなのだろうか。結構期待していたのだが、こうも思っていた。想定を超えてくることはまずないだろうなと。彼らの活動の殆どを既に知っていると思っていたから。意外なことにこの予想は覆された。充実した見応えたっぷりの展示で、心からオススメできるものだった。順を追ってみていきたい。まずは美術館の建築から。日本の美術館にしか行ったことのない自分にとって、美術館建築は、毎度なんじゃこりゃ、となる。あいちトリエンナーレの時に初来館して、正直そう名古屋市美術館もそんな中のひとつだと思っていた。しかし、今回正規のルートで訪れてみると(トリエンナーレでは順路を変えていた)、実に見やすく少しおかしみもあって自分は好きだった。黒川紀章設計。展示はどうだったか。ハイレッド・センターの中でも赤瀬川原平の活動はフォローできているつもりでいた。大物になった赤瀬川の基礎を作ったのがハイレッド・センターだ、ぐらいの傲慢な思い込みがあった。半芸術トマソン路上観察学会はもとより、それ以前の活動も著書にまとめていたのは赤瀬川だったから、当然司令塔も彼だと思っていたのだ。実際はどうなのかはカタログにまだ詳しく目を通していないから分からない。しかし今回見えてきたのは、三人それぞれの多才ぶりだ。そして中でも中西夏之に特段興味が誘われた。高松次郎はまっとうだ。高松については《影》のシリーズのみ知っていたが、《点》のシリーズがよかった。本当に気に入った。垂らした紐やタイヤを引きずって歩く光景はさながらフランシス・アリスだ。どや。赤瀬川は理知的で理解できるし確かに面白い。そして漏れる部分もいい。とくに、最後のスペースのマリア像なんかはよかった。コラージュも素晴らしい。さて、中西だ。よくわからないのだ。確かなのは、写真映えがよいこと。山手線事件含め、記録写真の、そのイキイキとしたこと!最後の部屋の絵画も、本当にいい。ゴミと見紛う《コンパクトオブジェ》から(《韻》もあまり好きではない)、感想を複数抱ける絵画まで。最近観ている東映往年のヤクザ映画で言えば、親分の弟子みたいな存在。資料の豊富さを見れば、いかに意識的に行動し保存していたかが見て取れる。やはり作家にとって一番重要なのは資料と写真だな。光田由里さんの文章をまとめて読みたくなった。なんかすげえ人だな。
(あとで編集します、今日は眠いので)

ハイレッド・センター──「直接行動」の軌跡:学芸員レポート|美術館・アート情報 artscape

加治屋氏の評