新作 3月
『LEGO ムービー』(フィル・ロード、クリストファー・ミラー、2014年)★★★★★☆
Warner Bros. Pictures
Starring: Alison Brie, Amanda Farinos, Anthony Daniels, Charlie Day, Chris Pratt, Craig Berry, David Burrows, Elizabeth Banks, Keith Ferguson, Liam Neeson, Morgan Freeman, Nick Offerman, Will Arnett, Will Ferrell
Summary: An ordinary LEGO minifigure, mistakenly thought to be the extraordinary MasterBuilder, is recruited to join a quest to stop an evil LEGO tyrant from gluing the universe together.
一ヶ月前ぐらいに英語のツイッターで軒並み話題になっておりずっと楽しみにしていたのが本作。すごく面白かった。なにが面白かったかといえば、ストーリーがハチャメチャなのにそれをしっかり構成として回収できたことにだ。この映画はスピード感があって次から次に物事が展開する。その展開の仕方もふつうな感じではなくて入れなくてもいいちゃちゃが入ったりして思うようには進んでくれない。それはまるでレゴを遊ぶ子供の脳みそのような構成だった。ご多分に漏れず私もレゴを遊ぶ子供だったけどレゴの遊びとは誰かに分かってもらうための遊びではなかった。公表の必要性のない、つまり自分さえ納得すれば何でも有りの遊びだったのだ。レゴはただ建物や道具や乗り物を作るのではなくっていつのまにか物語が付随してしまうブロック遊びだ。何かをつくれば自然とそこから物語を派生させてしまう。そして物語が進んでいても作りたいものができれば途中で作ってしまうし、物語に関与していた完成品のブロックも他に必要になれば崩してバラバラにしてしまう。だれに見せる必要もなく自分の脳内の物語につながりがありさえすればそれですべてはよかったのだ。この映画のストーリーもまさしくそれだと思った。もちろん映画だから観客はいるにちがいないのだけれど作りは完全にレゴの世界で遊びまわる子供の脳内だったのだ。そしてこれだけでもう満足していたらこんなもんではなかったのだ。ちゃんと回収するプロットが用意されていた。本当に物語は子供の脳内の出来事だったのだ。父親が完璧な世界観でブロックの容量用法を逸脱なく使っていた。地下でこっそり遊んでいたのだろうブロックのまわりには「触れてはいけない」だとか「近寄らないで」など壊されないための注意に溢れていた。そんな父の遊び場に足を踏み入れた息子が勝手に弄って自分の世界に変えてしまった。だからこの映画の世界にはバットマンもスーパーマンも出てくるし、ウディ・アレンもダンブルドアもロード・オブ・ザ・リングのひげもじゃも出てくる。脳内だからなんでもありなのだ。これでノックアウトされた。子供が遊んでいるように映画を作るというただそれだけでもよかったのに、ちゃんとその構造を現実の人間の映像を踏まえることで可視化し(終盤になるまでレゴのみで話は進んでいくのだ)意味づけたのだ。父親は自分の世界を崩す息子を窘める。それはレゴの世界においてスパボンによって関係性を固めてしまおうとする敵役のように。ただ息子はそれを嫌がった。関係性を固めたくなかった。何かがいつほかの何かに変化するのかもわからないのだから。それこそレゴの面白さなのだから。最後になって父は気づく息子の言い分に。そしてタコスデイを迎える。これは現代版『メリー・ポピンズ』だ。『メリー・ポピンズ』は子供の映画と見せかけて一緒に見に行きていた両親にメッセージを伝える映画だった。固くとらわれていた父親をただバッシングするだけでなく、父の辛さも代弁しながら自由への解放を奨励する映画だったのだ。本作もまさしくそうで、父親たちは自分がかつてレゴによって見出していた遊びの果てなき自由さを追体験しながらその魅力に気づき、自分の教育を思い返していただろう。大人になるということは自分の成果物がさらされるということと同義である。成果を社会に晒して対価を得て報酬で暮らす。子供はその必要がない。自分さえよければいい自由さと気楽さがある。何かを得て何かを失ったものが、かつての自分と共にかつての脳内を追体験して現在の自分にフィードバックさせることもできる、レゴにしか作れないレゴ映画だったのだ。
『LIFE!』(ベン・スティラー、2013年)★★★★☆☆
「The Secret Life of Walter Mitty」が原題の本作は、監督ベン・スティラーが主役も務めている。長身ではなく顔もそこまでかっこいいわけではないから画面映えはしないがリアリティがある。そう、この映画は緻密なリアリティゆえに最後に喜びのある映画なのだ。写真誌「LIFE」の紙版が終刊することになりリストラ要員として上司が派遣されてきた。主人公ウォルターは現像部に配属しており、写真家ショーンから送られてきた最終号の表紙のネガを現像せねばならなかった。しかしネガ(25番目の写真)が見つからない。ショーンは携帯電話も持参せず世界中を飛び回っていた。一刻も早く写真を受け取るためショーンの足取りを探し彼のもとへいくことに。グリーンランドから旅は始まるが、いきなりショーンが写真に撮っていた親指と出会い、意を決してヘリコプターに乗り込む。舟から海に飛び降りたり、スケボーで荒野を走ったり闇雲に追いかける。一旦アメリカの自宅に戻り家族(母と妹)にこのことを告げると実はショーンが自宅を訪ねてきていたことが判明する。ネガの一枚と自宅の机の足が一致したのだ。母親によるとショーンはアフガニスタンにいることがわかる。エベレストに登頂しついにショーンと合流。ショーンはウォルターに贈った財布にネガを入れており驚かせるつもりだったという。現地の若者とサッカーを楽しむうちに拉致され、ついには勾留。インターネットの出会い系サイトの運営者が救いにきてくれる。実はウォルターは会社の新人シェリル・メルホフに恋をしており、出会い系サイトで声をかけようとしていたのだ。ただ、ついこの前までのウォルターには取り柄も経験もなかった。この旅のおけげで彼は得難い経験をし、欄には書き込める経験が増えていた。それなのに旅中には、もう必要ないと電話でアカウントの削除を申し出ていたのだった。運営者はあなたは大人気になっていると言う。それほど魅力的な人間に旅が変えたのだった。会社に戻るとシェリルは解雇されていた。ネガをテッドに叩きつけるウォルター。シェリルの息子に旅のおみやげとしてスケボーを届けた(一度息子とスケボーで遊んだことがあった)のだが、数日後メールが届くとそこにはスケボーで遊ぶ息子の姿が。二人は再開し、シェリルは感謝を告げる。立ち寄った路面のキヨスクには最終号のLIFE誌が。表紙には「LIFEをつくった人々へ」の文字に添えられてウォルターの写真が載っていた。ラストでは思わず涙ぐんでしまった。冴えないベン・スティラーが演じたからこそ旅をしてからの彼の凛々しさに惹かれるものがあった。よくある枠組みのヒューマンドラマにくくれないような想像のSF展開も魅力的で序盤にはそんなシーンは多かった。出会い系サイトの一連の問題がうまく活きていなかった(運営者との絡みも)り、テッドとの一騎打ちももう少ししっかりやってもよかったとは思うが、うまいつくりになっていた。一歩踏み出すと変わることが主題として強すぎないことがメッセージを本当に伝えたい場合には逆に有効であると言えることがわかったようにおもう。
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