艾未未は謝らない

彼の来歴を知るために役に立つ。父・艾青、母との関係、20代のアメリカ生活、30代以後の中国での生活。総ざらいをしてくるから、艾について何も知らなくても2時間座っていれば知識は身についているだろう。ユーモアのある飼い猫との出だし、子供のことなど、「活動家」ではない側面にもスポットは当たる。だが、中弛みして、冗長な映画であることに変わりはない。こちらに前提知識があれば、それはもう構築された、知っている世界でしかないのだ。

彼が第一世代として中国で現代アートの活動を開始して、90年代に外国のアートを自国に紹介し、北京オリンピックのメインスタジアム設計が任されたことで欧米での知名度が鰻登りになって世界的なアーティストの道をひた走った。これはある程度多くの人間に共有された知識だろう。艾が「孤高の作家」ではなく、「社会的なアーティスト」であればなおのこと。

任じられたスタジアムの設計をアイは放棄する。そして、北京オリンピック自体に反対する。貧しい国民の上に偽りの祭典は必要ないのだと。その後についても、ツイッターやインスタグラムで公開されているから、知っていることばかりだ。
艾のスタジオは立て壊され、警官に暴行を受け、拘禁される。